抄録
大脳皮質の発達期には神経細胞の胞体が各領域で産生,分化した後,放射方向と接線方向に移動し層構造を形成するとされている。ヒト大脳皮質発達期の神経細胞に特異的なタンパク質として発見されたPGP9.5(ユビキチンカルボキシル末端酵素)が発現する状況を免疫組織化学的に検討した。ヒトの発達期におけるPGP9.5の発現は,在胎13週には分子層外部のCajal-Retzius細胞に,その後5層錐体細胞,2・4層顆粒細胞,3層錐体細胞の胞体,ニューロピルの順で増強し,加齢により低下していた。大脳白質では深層部が分子層外部と同時期に増強し加齢により低下していた。PGP9.5による陽性細胞の発現は,ヒト大脳皮質の正常な発達に沿って増強しており,軸索および樹状突起の成長発達を反映するものと考える。さらに神経系の損傷後には神経幹細胞が出現し再度軸索および樹状突起が成長発達を示すことから,神経系の損傷後に再生する蛋白質として軸索および樹状突起再生の指標となると考えられた。