抄録
大腿骨頸部骨折の受傷者が手術後,歩行を再獲得する過程で,バランスに関わるどのような要素が歩行能力に関与するのかを検討するために,安静時重心動揺距離,受傷側下肢荷重率,Functional Reach Test,Timed Up & Go Testの結果を継時的に観察した。対象は片側に大腿骨頚部骨折を受傷し,手術加療とその後の理学療法を受けた高齢者8名であった。歩行開始後1週間おきに上記項目の測定を退院するまで実施した。その結果,対象者全員において入院期間を通して歩行速度が向上し,受傷側下肢荷重率とTUGの値に歩行開始後の1週間で急激な改善傾向が示唆された。受傷側下肢荷重率の向上は痛みの軽減と筋力の回復によるものと考えられ,同時期にTUGの値が向上したことから,その要素となっている複合的な諸動作や動的バランスには下肢の支持力が重要であることが示唆された。