抄録
〔目的〕外傷性脊髄損傷では,損傷後に幻肢や異常感覚など身体イメージの障害が生じるが,リハビリテーションによって動作能力が獲得される。本研究では脊髄損傷者の身体イメージの変化を明らかにすることを目的とする。〔対象と方法〕第12胸髄完全損傷,対麻痺の一症例に対して,インタビューを実施し修正版グラウンデット・セオリーアプローチを用いて分析した。〔結果〕「残存域と麻痺域の感覚」,「知覚している感覚モダリティ」という2項目の概念が挙がった。〔結語〕運動に起因する残存域の体性感覚や,視覚によって麻痺域を知覚することで,障害された身体イメージが変化していく可能性が考えられた。また,麻痺域の異常感覚も身体認識を行うために使用し,それらを変化させながら身体イメージが構築されていくことが推測された。