2017 年 32 巻 5 号 p. 597-601
〔目的〕情報端末使用による視覚的注意の定位が衝突回避歩行に及ぼす影響を,速度と変位に着目して検討すること.また,干渉者の介入方法の相違による影響を分析すること.〔対象と方法〕対象は一般健常男性15人とした.干渉者の介入方法を6条件設定し,情報端末使用の有無による回避歩行課題を行った.三次元動作解析装置を用いて,1 mごとの速度と逸脱距離を算出した.〔結果〕文字入力を伴う「ながら歩行」は,通常歩行に比べ歩行速度に遅延が認められ,特に前方成分で著明だった.同様に側方への逸脱距離も「ながら歩行」で大きかった.干渉者の介入方法の相違による影響はみられなかった.〔結語〕情報端末への視覚的注意の定位は,干渉者とすれ違う前の速度と変位に影響を及ぼす.視覚情報処理機能と歩行機能のスクリーニング評価に応用できる可能性が示唆された.