2021 年 36 巻 3 号 p. 317-323
〔目的〕脊髄前角細胞の興奮性の指標として用いられるF波は,振幅や波形が多様性をもって出現することが一つの特徴である.本研究では,出現する波形の多様性に関する分析方法を確立する前段階としてF波の加算平均処理後の振幅値が平均振幅値を反映するか否かを検討した.〔対象と方法〕対象者は健常者25名,平均年齢22.1 ± 2.1歳であった.安静の状態で非利き手側の正中神経に電気刺激を与え,短母指外転筋からF波を導出した.全波形対象に加算平均処理を行い得られた波形の振幅値と,各波形の振幅の平均値を比較した.〔結果〕加算平均法処理にて得られた振幅値は,平均振幅値より有意に低下した.〔結語〕健常者の正中神経刺激にて得られたF波において,加算平均処理後の振幅値は平均振幅値を反映しないことが示唆された.