陸水学雑誌
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特集
伊豆・小笠原島嶼における陸水・沿岸水の栄養塩環境の特徴
野原 精一佐竹 潔高瀬 智洋黒川 信
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2009 年 70 巻 3 号 p. 225-238

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抄録
 島嶼における河川水や地下水の物質輸送が,どの程度沿岸域に影響をおよぼすのかを評価することを目的として,東京都小笠原諸島と八丈島および伊豆大島の島嶼で,1997年~1999年及び2005~2008年に陸水及び海水の採水・海藻の調査を行った。小笠原父島や母島の河川水の栄養塩環境は夏期に低く,冬期に高い季節変化が見られた。伊豆の島嶼の地下水の硝酸態窒素は高い濃度にあり,沿岸域の海藻の重要な窒素源となっているが,近年の生活形態や農業による水需要の変化によって,陸からの沿岸域への陸水供給減少に伴う栄養塩供給の減少と考えられた。海藻のδ15N値から陸水の栄養塩の影響を受け沿岸域の富栄養化が時代とともに進んできたと推定された。その影響は伊豆大島,八丈島,小笠原と本州から離れるにつれて小さくなってきていた。近年の伊豆大島,八丈島の海藻のδ15N値の低下は,陸からの陸水の栄養塩類供給が減少してきていることを示唆した。
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© 2009 日本陸水学会
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