陸水学雑誌
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特集
ため池の管理形態が水棲外来動物の分布に及ぼす影響
西川 潮今田 美穂赤坂 宗光高村 典子
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2009 年 70 巻 3 号 p. 261-266

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抄録

 外来種はため池生態系の生物多様性を大きく減少させる主要なストレス要因である。ため池は,氾濫原湿地を棲み場とする生物の避難場所を提供することから,生物多様性の宝庫となっており,従来の灌漑用途だけでなく,生物多様性を含む多面的機能に配慮した管理法が問われている存在である。本研究では,兵庫県の64のため池を対象として社会調査と野外調査を行い,ため池の管理形態が水棲外来動物の出現に及ぼす影響を考察した。野外調査の結果,外来動物では,ブルーギル(Lepomis macrochirus)とアメリカザリガニ(Procambarus clarkii)が出現率およびバイオマスの面でもっとも優占していた。一般に外来魚の駆除対策として池干しが行われるが,予想に反し,ブルーギルの出現は池干しの有無には左右されなかった。一方,アメリカザリガニは池干しをする池に多く出現することが明らかになった。ブルーギルは,ダム水および農業排水を主要な水源とするため池で多く出現することから,ダム湖や用排水路などから再移住してくるものと考えられる。ブルーギルとアメリカザリガニの(排他的)分布が種間関係によって決まっている場合には,一方を駆除すると他方の個体数が増える危険性がある。

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© 2009 日本陸水学会
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