陸水学雑誌
Online ISSN : 1882-4897
Print ISSN : 0021-5104
ISSN-L : 0021-5104
短報
新潟県三面川水系における渓流水質と集水域の地質および地形の関係
越川 昌美渡邊 未来高松 武次郎林 誠二野原 精一佐竹 研一
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 72 巻 1 号 p. 71-80

詳細
抄録
 三面川水系の上・中流域は,生活排水や酸性降下物などの人為影響が少なく、堆積岩,花崗岩,酸性凝灰岩,安山岩などの異なった地質を有する多数の小集水域から成っているため、自然条件と渓流水質の関係を調べるのに適している。本研究では、三面川水系の62の集水域において,渓流水中のNO3-,非海塩性(nss-)SO42-,nss-K,nss-Mg,nss-Ca,Si,Alの平水時濃度を測定し,水質と集水域の地質や地形(標高,面積,勾配)の関係を解析した。また,31集水域では降雨時水質も測定し,雨の影響も調べた。主成分分析の結果,水質7成分の変動の57.2%を説明できる2つの主成分が得られ,第1主成分(寄与率32.7%)は集水域に占める酸性凝灰岩の分布割合と,また、第2主成分(24.5%)は主に標高と関連した。成分毎の解析では,nss-KとAlは酸性凝灰岩の分布割合の増加に伴って,また、nss-Mgとnss-Caは酸性凝灰岩以外の地質の増加に伴って増加した。渓流水中のnss-K,nss-Mg,nss-Caの濃度は集水域に分布する主要岩石の元素組成を反映した。一方、Al濃度は,地質元素組成の直接影響よりむしろ共存するCa濃度の競合的な影響を受けて変動した。SiとNO3-は標高の低下に伴って増加したが、これは気温、水温、土壌層の厚さ、水の滞留時間などの影響を受けた結果と考えられた。また、降雨時には,Si濃度が減少し,反対にnss-K,Al,NO3-の濃度は増加した。降雨時に土壌浅層を経由した水が渓流に流出する経路(中間流出)では,平水時に土壌深層や岩盤風化帯を経由した水が渓流に流出する経路(基底流出)と比較して,Siが低濃度でnss-K,Al,NO3- が高濃度であるためと推定された。
著者関連情報
© 2011 日本陸水学会
前の記事 次の記事
feedback
Top