陸水学雑誌
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短報
チベット高原・プマユムツォ湖の水温躍層(20-25 m)以深における一次生産の規模とその維持機構に関する検討
松中 哲也, 西村 弥亜, 村上 哲生, 井筒 康裕, 奈良 郁子, 渡邊 隆広, 今井 章雄, Liping ZHU
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2012 年 73 巻 3 号 p. 167-178

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抄録
 標高5,030 mのチベット高原南部に位置する高々山湖(2,000 m以上の標高にある高山湖, high alpine lake; 例えばDokulil, 2005)・プマユムツォ湖の水温躍層以深における一次生産の規模とその維持機構を検討するため,2006年8月,湖の中央部に近い水深50.5 m地点でセジメントトラップ実験を行った。水深 27 mと 45 mに設置したトラップに捕捉された沈降粒子について,サイズと有機物の起源パラメーター(C/Nとδ13C)を基に起源解析を行った結果,以下の事柄が明らかになった。
1)水深 27-45 m層における沈降粒子となる植物プランクトン起源有機炭素の平均生成速度(0.63 mg-C m-3 d-1)は,上層の0-27 m層におけるそれ(0.15 mg-C m-3 d-1)を,少なくとも約4倍(4.2倍)上回っていた。この増加率は,各層の中間点である13.5 mと36 mの間の一次生産速度の理論値(13.5 m: 0.042 mg-O2 l-1 h-1, 36 m: 0.17 mg-O2 l-1 h-1, Murakami et al., 2007)を基にした生産速度の増加率(4.0倍)とほぼ同等であることから,プマユムツォ湖の27-45 m付近に,一次生産の亜表層極大が存在することが明らかになった。また,当湖は一般に貧栄養湖に分類される高々山湖であり,加えて森林限界を大きく超える標高にありながらも,その亜表層極大では,中栄養湖を上回る規模で一次生産が維持されていることが示唆された。
2)この様な水温躍層以深の高い一次生産を支える,栄養塩の運搬・補給機構として,湖の表水層の水温(10-13℃)よりも,冷たい河川流入水(約5℃) の深層貫入が主要な働きをしていると考えられた。この深層貫入の存在は,湖水中のsiltとclay,陸上植物起源有機炭素,および土壌起源有機炭素の平均存在量が,0-27 m層より27-45 m層で2から4倍高いことからも支持され,下層における栄養塩の補給が,上層より数倍高くなっていると推測された。一方,N栄養塩については,湖底泥からの拡散による供給も示唆された。
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© 2012 日本陸水学会
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