抄録
本研究は,気候変動および土地利用変化が流域からの栄養塩,土砂流出へ及ぼす影響の評価を目的とし,一級河川芦田川支流の高屋川流域を対象に最近32年間の栄養塩流出量の変動解析および,土地利用変化が栄養塩流出量に及ぼす影響の感度分析を行った。その結果,近年の河川流出の傾向として,流量と応答して非常に多くの栄養塩が流出する洪水期と流出量が減少する渇水期の二極化が進行している可能性が示唆された。また,流域内の土地利用が水田から荒地へと変化すると流量,SS,栄養塩フラックスに対して若干の増加傾向を示し,住宅地化が進むと,流量および溶存窒素(DIN),溶存リン(DIP)フラックスの増加およびSS,懸濁態窒素(PN),懸濁態リン(PP)フラックスの減少を示し,畑地化が進むと流量,DIPフラックスの若干の減少と,SS,PN,PPフラックスは増加することが明らかとなった。そして,流域からの栄養塩流出量のN:P比の長期変動を推定した結果,全体的にレッドフィールド比の16よりも高い40前後を推移していることが明らかとなり,特に1990年代後半からは,DIP濃度の減少とDIN濃度の増加によって,窒素過剰な状態が進行していることが明らかとなった。