陸水学雑誌
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原著
アサザとヨシから溶出する有機炭素量とその分画
上原 達弥山室 真澄
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2014 年 76 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

 湖岸もしくは湖岸近傍で前年に成長・枯死したヨシやアサザから供給される溶存有機物と酸素消費が湖沼水質に与える影響を見積もるため,20℃・100日間・暗条件での分解・溶出実験をMilli-Q水と手賀沼湖水を用いて行った。また溶存有機物の分画も行った。100日後に得られた濃度から計算した植物体炭素量あたりの溶存有機炭素量を比較すると,ヨシ葉と茎ではMilli-Q水・湖水でそれぞれ43.4±1.54 mg C g C-1・43.7±1.51 mg C g C-1,と水条件による違いはほとんど見られなかった。これに対しアサザ葉柄ではMilli-Q水・湖水でそれぞれ17.7±2.76 mg C g C-1・73.0±1.89 mg C g C-1,と,水条件の違いで4倍以上の差が生じた。アサザ葉身ではMilli-Q水・湖水でそれぞれ163±5.4 mg C g C-1・267±7.5 mg C g C-1だった。湖水条件で比較すると,アサザ葉身はヨシ葉と茎の6倍,葉柄では2倍近くの溶存有機物を供給した。湖水条件で行った実験の100日後の溶存有機物の分画では,ヨシ葉と茎は疎水性酸と親水性画分の割合がほとんど等しくなり,この2画分で溶存有機物の96.4%となった。アサザ葉柄では疎水性酸の割合が全体の48.4%で,アサザ葉身では親水性画分の割合が全体の46.2%で,それぞれ最も多い画分となった。

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© 2013, The Japanese Society of Limnology
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