陸水学雑誌
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原著
夏季停滞期の群馬県榛名湖における溶存無機炭素の起源および供給プロセスに関する評価
山中 勝
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2017 年 78 巻 3 号 p. 217-230

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抄録

 群馬県中央部に位置する榛名湖を対象として,夏季停滞期における溶存無機炭素(DIC)の起源および供給プロセスについて,炭素同位体組成(δ13CDIC)と水質組成を用いて検討を行った。水温の深度プロファイルから榛名湖水は表水層と深水層という大きく二つの層に分類され,その間にある深度7~8 mには水温躍層を持つことが明らかとなった。表水層では深水層と比較して,より高いpHと溶存酸素(DO),より低いDIC濃度,CO2分圧(logPCO2),δ13CDIC値を持っており,これらは有光層としての表水層における光合成の結果により生じたものといえる。同位体濃縮係数(ε)を-16.6‰としたRayleigh modelによる検討を行った結果,深水層から表水層にかけて認められたDICの濃度低下およびδ13CDIC値の上昇は,最大30%のDIC消費をともなう光合成で十分に説明することができた。さらに,榛名湖水と初期状態で平衡にあるCO2ガスのδ13C値について算出を行ったところ,約-21‰と求められた。この値から判断して,榛名湖水のDICのほとんどは呼吸を通じた有機物分解によりもたらされており,大気CO2ガスの影響は無視できるものといえる。

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© 2017, The Japanese Society of Limnology
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