河川の水質形成を考える上では,その集水域の情報が重要となる。多様な流域環境を持つ多摩川水系の浅川を対象として,流域内に設けた34の観測点の水質指標と,各観測点の集水域指標を用いて相関係数の算出と,多変量解析(クラスター分析,主成分分析)を実施し,水質と集水域の因子の関連性を考察して,水質の情報と集水域の情報の両者を用いた総合的な河川水質と流域特性の把握の手法を開発することを試みた。クラスター分析の結果は,水質指標と集水域指標とでは似た結果を示したが,一部分類の傾向に違いがあり,その違いを用いて対象流域内の特殊な支流や点源汚染の抽出や,その要因について考察することができる。また,主成分分析の結果はクラスター分析の結果と比較して自然及び人為のどちらが大きな影響を与えているかを考察することや,特異な集水域指標を持つ支流がどの程度水質形成に影響を与えているか等を明らかにするのに用いることができる。本研究による河川の水質指標と集水域指標の両者に多変量解析手法を適用させる方法は,流域内の因子が水質に与える影響を理解することに役立ち,河川流域の管理や保全に活用されることが期待される。