陸水学雑誌
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日本の無機酸性水域に於ける藍藻Cyanidium caldarium (TILDEN) GEITLERの生活状態に就いて
根來 健一郎
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1942 年 12 巻 2 号 p. 41-49

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抄録

(1)藍藻Cyanidium caldarium (TILDEN) GEITLERは,日本の無機酸性水域中,その温泉に廣く分布する。
(2)本藻の生育温度範圍は,著者の野外觀測の結果によると,23.0°~50.0℃であるが,その良好な生育は大體35°~50℃の範圍内に於て見られる。
スンダ諸島の硫氣孔原水域に於けるガイトラー・ルットナー兩氏の知見及び本邦八甲田山酸ケ湯に於ける岡田要之助博士のそれは,その基礎となつてゐる觀測資料は餘り多くはないが,大綱に於て著者の研究結果とよく一致する。コプランド氏及び江本博士等の記載による上の限界温度は高過ぎると思ふ。
(3)本藻は微酸性水域(pH5.0~6.8)にも生育することが江本博士等により觀察せられてゐるが,その著しい繁殖は無機の強酸性水域にのみ限られ,その生育箇所の水のpHは,著者の野外觀測の結果によると,1.0~4.0の範園にある。
(4)從つて本藻の著しい繁殖は無機酸性温水域(酸性温泉)の良き指標となる。
本研究は帝國學士院の御援助によつて行ひつつある「日本の無機酸性水域に於ける植物群落の生態學的研究」の一部である。ここに同院に對し感謝の意を表する

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