陸水学雑誌
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吉野川におけるユスリカ幼虫Spaniotoma sp. Aの成長の研究
北川 礼澄
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1969 年 30 巻 2 号 p. 59-67

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抄録

1. 吉野川宮滝地区におけるユスリカ科幼虫の優占権であるSpaniotoma sp. Aの成長過程および1年間の発生回数を各月ごとの推移から推定した.
2. 幼虫の「令」は頭長によつて識別することができるが, その基準を季節によつて変えなければならない, 一般に夏期は小さく, 冬期は大きい.また, 令が進むに従つて冬期と夏期の差は大きくなる.
3. 冬期では同令幼虫内での個体差は大きく, しかも令が進むほどその差は大きくなる.これはIII令, VI令の期間が長いためである.
4. 低水温 (5~6℃) は幼虫の脱皮および蛹化を抑制する.
5. 越冬幼虫は10月上旬から中旬にかけて産卵されたもので, I・II令虫の期間は11月の中旬ごろまでで, 越冬期の前半はIII令虫で, 後半はIV令虫で過ごすものが多く, 4月中旬から下旬に一斉に羽化する.
6. 蛹の状態で越冬するものはなく, 蛹化したものは低水温期でも羽化する.
7. 1世代の期間は水温の高い夏では約30日, 5月ごろでは約60日, 越冬幼虫では180日余にもおよぶものと考えられる.
8. Spaniotoma sp. Aの1年間の世代は5回ないし6回であると推定できる.

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