陸水学雑誌
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再び荒池におけるEodiaptomus japonicusの令期解析
中村 郁子
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1969 年 30 巻 2 号 p. 68-80

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抄録

1968年5~6月 (春) と7~8月 (夏) の2回に分けて奈良公園内にある荒池でプランクトンの採集を行ない, 橈脚類の一種, Eodiaptomus japonicusの生活史について令期解析を用いて研究した.荒池には他に動物性プランクトンとして, Cyclops hyalinus, Bosmina longirostris, Bosminopsis deitersi, Diaphanosoma brachyurum, 輪虫類のAsplanchna sp., Polyarthra triglaが比較的多くみられた.この池には魚も飼われており, 3m以深は溶存酸素がないという非常に富栄養の池である.
環境要因として, 水温, pH, 溶存酸素, 電気伝導度を測定したが, いずれも停滞期の現象を示していた.
プランクトンの採集は3ヶ所で行ない, 底から表面まで垂直的に採集した.
Eodiaptomus joponicusを令期ごとに分けて個体数を数えた.各令期は外見や付属肢の発達程度の差で分けることができる.生活史は卵, 6段階のNauplius, 6段階のCopepodidから成っているが, 今回は, Naupliusを一括して扱い, N, C I~VIの7段階に分けて研究した.
各令期の存続期間は令期ごとのピークとピークの間の日数を推定することにより求めた.この結果, 池内の採集場所の差による期間のちがいはみられなかった.しかし, 時期の差により令期の期間にちがいがみられた.すなわち, 春にはN : 4日, C I~C VI : 3日, C V : 4日あるいは4日以上, 夏には, 7月でN : 2日, C I : 1~2日, C II~C V : 4~5日, C VI : 4日, 8月でN : 1~2日, C I : 1日, C II~C V : 1~2日, C VI : 2日であった。この間では, 時期が早いほど令期の期間は長くなっている.
令期ごとの死亡率をグラフの面積を用いて求めた.Nauplius期の死亡率が一番高く80%前後であったが, 次のC I期には死亡率は急激に下がり20~30%であった。C I以後の令期においては死亡率はあまり変わらず20%前後であった.

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