陸水学雑誌
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日本の湖水の化学成分
IV硫化水素
吉村 信吉
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1934 年 4 巻 1 号 p. 11-27

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抄録
1.日本に於て鹹水湖に多量のH2Sが檢出され特に春採湖の中層は380mg/lに達し,世界一の稱があつたHemme sdorfer See(304ma/l)をも凌駕してゐる。
2.定量方法の注意を述べた。
3.H2Sの生因としては湖底湧泉,有機物の腐敗は重要でないことを述べた。H2Sの量が二,三の湖では底層水よりも反つて中層水に多いのはこの考へを助けるやうである。
4SO4からの還元が重要であると考へた。理由としてはH2Sの多い層ではSO4の量が減少し,實際の含有量と計算量の差から生じ得べきH2Sの値を計算すると殆んど總ての場合含有H2S量に等しくなる。硫黄還元細菌の作用により環元されると思はれるが今の所何も研究してゐない。
5.H2Sの多い湖は硫黄榮養型として非調和型湖沼と考へるよりも硫黄榮養相として調和型湖沼の一變形と考へる方が至當のやうである。
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