陸水学雑誌
Online ISSN : 1882-4897
Print ISSN : 0021-5104
ISSN-L : 0021-5104
キイロカワカゲロウ孵化におよぼす水温の影響
渡辺 直
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 53 巻 2 号 p. 125-131

詳細
抄録
香川県香東川から採集されたキイロカワカゲロウの卵を,温度範囲4.8℃~30℃の9段階の恒温条件で飼育し,孵化におよぼす水温の影響を調べた。温度範囲15~30℃における孵化率は34~53%であり,約20℃で最も高かった。しかし,15℃以下では急激に孵化率が低下し,13℃ではほとんど孵化しなかった。孵化に要する日数(Y)と水温との間には逆の相関が認められ,この関係は双曲線式によって近似された。卵発生速度(1/Y)と水温との関係から計算された,50%の卵が孵化するための卵発生の臨界温度は10.5℃となった。
このことは,卵発生の臨界温度と孵化の臨界温度とが異なることを示唆するものである。また,50%の卵が孵化するのに要する有効積算温量は10.5℃以上の積算で222.2日度と計算された。キイロカワカゲロウの生活環が調べられている兵庫県羽東川の水温データに上の実験結果を当てはめると,水温が15℃に低下する以前に孵化するためには,9月下旬までに産卵されなければならないことになる。実際の羽化期は6月から10月まで続くので,羽化期終盤に生み出された卵は秋の間には孵化出来ないはずである。これらの卵は越冬して翌年の春に孵化する可能性がある。この推測は4月・5月には小型個体が明らかに増加する事実と一致している。
著者関連情報
© 日本陸水学会
次の記事
feedback
Top