陸水学雑誌
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湖沼への大気降下物とその生態学的影響:研究の回顧と将来展望
Eville GORHAM
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1992 年 53 巻 3 号 p. 231-248

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抄録
化石燃料に起因する大気汚染は長い歴史を持っている。しかし,汚染ガス・酸性物質・重金属が大気を経て,湖や河川へ遠距離を運ばれている事実が科学者や市民に注目されるようになったのは1950年代以降である。放射性降下物や多種類の微量有機物も大気によって1940年代以後,陸水域に広がっている。遠距離移動大気汚染物質が水界生態系の破壊とそこに生息する生物への悪影響に確実に関与していると考えられるのは酸性降下物の場合のみであるが,放射性降下物による汚染や微量有機物・重金属による汚染もすでにそのような被害を引き起こす閾値レベルに達している可能性がある。それ故,それらの閾値レベルを決定するために,諸水界生態系の広域的な調査,各地域での生物個体群動態研究,古生態学的研究,長期モニタリング,湖や河川全体を対象とした汚染影響とそれからの回復過程についての長期実験が必要である。
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© 日本陸水学会
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