抄録
震生湖における湖水のアルカリホスファターゼ産生細菌の分布と単離菌株の生理的性状について調べ,次のような結果を得た。
1) 震生湖の湖水中のホスファターゼ産生菌数は100-10000cfu・ml-1で,成層期には表層水に多く,循環期にはほとんど均一に分布していた。また,原湖水のアルカリホスファターゼ活性の総活性は20-80nmol・1-1・min-1であり.,グラスファイバーろ紙によるろ過湖水の活性は総活性の30-50%を占めていた。
2) 震生湖より分離した4株のホスファターゼ産生菌は,その増殖において単一のリン源としてグルコース-6-リン酸,β-グリセロリン酸,ADP,トリポリリン酸ナトリウムを利用したが,ATP,DNA,レシチン,フィチン酸は利用されにくかった。
3) ホスファターゼ産生菌のうち一種をAcinetobacter属の菌種と同定した。Acinetobacter sp.の培養ろ液により,グルコース-6-リン酸,βーグリセロリン酸,ADP,トリポリリン酸ナトリウムはよく分解されたが,レシチン,ブイチン酸は分解されなかった。これらの作用は菌体外酵素のアルカリホスファターゼによると考えられた。
4) Acinetobacter sp.は培地中のリン源が枯渇すると,急激に菌体外にアルカリホスファターゼを放出した。この酵素活性の至適pHは8-9であった。