抄録
屋外に設置された流路長約30mの循環水路6本を用いてユスリカ羽化に対する界面活性剤ABS(アルキルベンゼンスルホン酸塩)の影響を調べた。水路からは8種のユスリカが羽化したが,そのうちCricotopus tamapullusとParatrichocladius rufiventrisの2種が優占した。平均濃度で約0.2,1.0 ppmの2段階と約2.7ppmの1段階とに2回に分けて非暴露水路を対照として1カ月以上の長期暴露を行った。このうち2.7ppmでのみ優占ユスリカ2種の羽化の有意な減少が認められた。この羽化の減少は,表面張力の低下により羽化が困難になるか,あるいは水中生活期のユスリカが不利な影響を被る事によって起きたものと推測された。後者の可能性は,羽化が減少した暴露水路で付着藻類現存量が顕著に減少した事実によって二次的影響として示唆された。