抄録
最近開発された超音波ドップラー流速プロファイラー(ADCP)は,海洋観測においては実用化されているが,陸水学的研究にはいまだ利用されていない。われわれは,1992年8月25日~27日にわたって,汽水湖である中海,宍道湖,および感潮河川である大橋川において,ADCPを流速測定のために試行的に利用する機会を得た。今回のADCPを用いた試験的観測結果によって,迅速かつ連続的な測定が可能であり,とくに成層構造をもった二重層の流れを記録することが出来るという点で,このような水域での観測にはきわめて効果的であることが認められた。また,この方法は,簡単なデータ処理によって,流れのパターンを可視化するのにも非常に便利である。ただし,この方法は表層と水底近くでの測定が不可能であり,また船速に対して弱い流れの場では測定誤差が大きくなるので浅い水域や流れの弱い場では有効に利用できない。