夏期の渇水期に,東日本の勾配の緩い河川(雄物川,最上川,信濃川),及び長良川の下流部に於いて,.自生的な浮遊珪藻類の発生を認めた。それらの河川で発生した浮遊珪藻群集は,1)優占種が少数の種に限定され,それが各河川に普遍的に見られること,2)下流に向かうに従い,その現存量が増すこと,3)河口付近では,優占種が緑藻類や藍藻類と交代する場合もあること,等の特徴を持っていた。河川棲浮遊珪藻類の発生は,長良川では,毎年夏の渇水期にのみ発生することが明らかになった。
真の河川棲浮遊珪藻類と認められた種類は,生細胞/死殻比が高く,剥離した付着藻類の流下とは区別できた。また,異所性の浮遊藻類の流下(天竜川)とは,流下に伴うクロロフィルa度とC/N比の変化の様式が異なる事で区別された。
日本の河川は,真の浮遊藻類を欠くとされていたが,夏期の渇水期に限れば,普遍的に河川棲浮遊珪藻類が発生しているものと判断された。浮遊藻類の発生については,河川容量/流量比が大きくなり,流達日数が長くなることが原因の一つであるが,これには,河川の掘り込みや流路の拡幅などの河川改修が影響しているのではないかと考えた。今後,「河川富栄養化」は,水質保全や利水上重要な問題となっている可能性がある。