陸水学雑誌
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青森県汽水湖尾駮沼の堆積物中における238U, 137Cs及び安定元素の分布特性
植田 真司川端 一史長谷川 英尚桜井 直行近藤 邦男
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キーワード: 汽水, 尾駮沼, 238U, 137Cs, 堆積物
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1998 年 59 巻 2 号 p. 159-173

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抄録

尾駮沼は,使用済核燃料再処理施設等の原子力サイクル施設が隣接する汽水湖である。使用済み核燃料再処理施設が稼働する前の汽水湖尾駮沼における湖底堆積物中の放射性核種(238U,137Cs,40K)及び安定元素(Mn,A1,Co,Ba)の濃度レベル及び地理的分布を把握するために調査を行った結果,以下のことが明らかになった。
1)元素によって高濃度の分布が観測された水域が異なり,東西に細長い水域で濃度が高い元素(238U,137Cs,40K及びMn)と二又川河口水域で濃度が高い元素(Al,Co及びBa)の2つに大別された。2)堆積物中における238U及び137Csの濃度は,水深の大きい水域ほど高い傾向が認められた。3)湖水中の238U及び137Csの濃度と塩分との間には正の高い相関関係(r=0.95及び0.89)が認められ,堆積物中の238U及び137Csの主な供給源は,海洋であると判断された。一方,Al,Ba及びCoの濃度は,二又川河口水域を中心に高く,太平洋側へ向かうほど低くなっていることから,主な供給源は陸域であると判断された。4)238U及び137Csの濃度が高い堆積物の粒度組成は,粒径0.075mm以下が50%以上を占めるシルト状であり,しかも強熱減量が14~16%と有機物含有量が多かった。これらから,238U及び137Csの堆積物における蓄積は,堆積物の粒径及び物理化学的性状が大きく関与しているものと考えられる。

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