1998 年 59 巻 2 号 p. 175-183
日本産コガタシマトビケラ属3種の雌雄成虫と幼虫の酵素多型を,ポリアクリルアミドゲル電気泳動により解析した。これらの昆虫は,形態観察用の部位(成虫では生殖器と翅,幼虫では頭胸部)と酵素分析用の部位(後胸と腹部数節)に分けて用いた。リンゴ酸脱水素酵素(MDH)は成虫のみから検出され,グルタミン酸脱水素酵素(GDH)とアルカリホスファターゼ(AP)は幼虫のみから検出された。エステラーゼ(EST)は雌雄成虫および幼虫から非常に強く検出された。エステラーゼのザイモグラムは,形態的に種の区別できる雄成虫では種間の明瞭な差が検出され,同種の雌雄成虫と幼虫の間では,基本的な判別バンドは完全に一致していた。したがって,雌雄成虫および成熟幼虫については,エステラーゼのザイモグラムの比較により,3種の区別が可能であることが判明した。