抄録
地球温暖化の湖沼プランクトン群集に及ぼす影響について,これまでの報告を整理し,考察を加えた。
温暖化が進むと湖の深水層の溶存酸素濃度が低下し,植物プランクトン群集ではラン藻が優占するようになる。この影響は湖の富栄養化に似ている。動物プランクトン群集では,高温耐性の低いアミやDaphniaが減ることになる。また,多くの動物プランクトン種で成熟サイズの低下が起きる。温暖化は暖水性の魚の分布域を広げ,逆に冷水性の魚の分布域を大きく狭める。この変化は動物プランクトンの種組成や分布を変えることになる。また,それ以外にも様々な生物問相互作用に影響を与えると考えられる。温暖化は生物多様性にも影響し,プランクトン群集の種多様性を低下させるとみられている。
さらに,温暖化の進行に伴い湖水中の有害化学物質濃度や紫外線量が増大し,プランクトン群集に対しより深刻な影響が及ぶだろう。これらの結果,湖沼生態系の構成種が小型化してエネルギー転換効率が低下するという,生態系の構造的機能的変化が生じるものと考えられる。