2003 年 64 巻 2 号 p. 133-139
滋賀県水産試験場が73年にわたって観測した透明度のうち,沖合い3地点(St.II-IV)のデータについて長期的な変遷を統計的手法を用いて解析した。透明度の年平均値についてスプライン関数による最適モデルを求めたところ,St.II,IIIでは低下→横這い→低下→上昇の4区間モデルが最適となった。St.IVでは低下→上昇→低下→横這い→上昇の5区間モデルが最適だったが,St.II,IIIと同様の4区間モデルも2番目に適していた。4区間モデルの場合,区間の境目は3地点でよく一致し1950年付近,1975年付近,1990年付近となった。別の解析方法として1949年以降のデータについて60カ月移動平均を求めたところ,年平均値のスプライン関数モデルと同様の解釈をする事ができた。透明度の経月変化パターンを10年区切りの平均で比較した。1920-50年代には6-8月の透明度のピークの消失が,1980年代・90年代には5月の透明度の著しい低下が特徴として検出された。1990年代の透明度の上昇期には,植物プランクトンの現存量が増加していることから,植物プランクトンのサイズ組成の変化が透明度を規定する重要な要因である可能性が示唆された。