日本臨床外科医学会雑誌
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胃切除術後早期におけるRISA吸収に関する研究
河野 信夫
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1968 年 29 巻 3 号 p. 239-253

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抄録
胃切除患者の術後早期にチューブ栄養を実施し,この際の蛋白吸収能についてRISAを用い臨床的研究を行なった。対照例では十二指腸内にチューブからRISAを注入したが,注入後30分で血漿中RISA濃度は15%に達し以後速やかに減少した。胃切除術後患者28例の吸収試験成績では,RISAを小腸内に注入した。血漿中RISA濃度平均は60分で8%となり以後漸減した。疾患別では,良性疾患群は悪性疾患群に較べRISAの吸収は良好であった。術後日数別にみると,術当日よりも第1日,第2日と日を追ってRISAの吸収は良好となり,ことにチューブ栄養による腸運動回復の著るしい第1日に吸収の促進が認められた。一方,家兎の開腹術後第1日に直接十二指腸内に栄養剤を注入し同時にRISA吸収試験を行ない,直接穿刺により門脈血,静脈血を採取し吸収能を検索した。門脈血中RISA濃度は静脈血中濃度よりも速やかに上昇し,1.9~2.8倍となって60分以後ではほぼ同濃度に減少した。更に注入栄養剤の質,濃度の差異によるRISA吸収の変動につき検索した。注入栄養剤の濃度が高い場合は等張液注入の場合よりも血中濃度およびその最高値が低くなる傾向が認められた。また注入物質の質の差異によって血中RISA濃度ならびに吸収速度も変動することが認められた。
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