日本臨床外科医学会雑誌
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閉塞性黄疸における濃厚胆汁の閉塞解除後の変化
小林 衛嶋田 紘新明 紘一郎鬼頭 文彦佐藤 一美石黒 直樹福島 恒男土屋 周二
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1978 年 39 巻 4 号 p. 496-503

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抄録

濃厚な胆管胆汁を認めた閉塞性黄疸12例(悪性6例,良性6例,男子6例,女子6例,平均年齢57.4歳,平均血清ビリルビン値19.0mg/dl)を対象として,胆管閉塞解除後の胆汁成分の変化を調べた.閉塞解除法は手術による胆道外瘻8例, PTC-ドレナージ4例である.閉塞解除後,血清ビリルビン値10mg/dl以下の軽度黄疸6例は順調に黄疸が消褪したが, 15mg/dl以上の高度黄疸6例は20~30日後も10mg/dl前後の高値を示し,黄疸消褪が遷延した.なお黄疸のない胆石症の胆管外瘻(T字管)造設2~3週後の胆汁を対照として用いた.解除直後の1日排出胆汁量は300ml未満であったが, 4~7日後には300~700mlに増加した.胆汁中ビリルビン値は解除後急下降し, 10~20日後にはほぼ正常化した. 1日のビリルビン排出量は0.1~0.3gの範囲の例が多く,高度黄疸例は軽度黄疸に比べて,排出量は少なかった.胆汁中コレステロール値は解除後,軽度黄疸例では上昇傾向,高度黄疸例では下降傾向を示したが,両者とも10~20日後にはほぼ正常化した. 1日排出胆汁量200ml未満を持続した例および胆汁中ビリルビン値やコレステロール値が10~20日後も正常化しなかった例はすべて高度黄疸例であった.アルカリ・フォスファターゼ活性値は解除直後異常高値に急上昇し, 10~30日後も高値を持続し,正常化しない例が多かった.胆汁中レシチン値は解除後下降し, 5~20日後には上昇傾向がみられたが,これらの変化は対照例のレシチンの範囲内のものであった.胆汁中総胆汁酸濃度は解除後下降し, 5~20日後も対照例の下限前後の低値を持続し,上昇傾向はみられなかった.また一次胆汁酸であるコール酸,ケノディオキシコール酸は総胆汁酸と同様の変化を示したが,二次胆汁酸であるディオキシコール酸,リトコール酸,ウルソディオキシコール酸は肝腸循環障害のため,解除後5日以降は検出不能であった.

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