抄録
1. 大量の吐血・下血によりショックに陥った2症例の緊急開腹手術に際して,膵頭部の破格を認めた.
1例は73歳女. Harris' band様模様構築物に胃幽門部及び十二指腸の前面を被われ,この模様物を切離することによって十二指腸下行部を囲む完全な輪状膵を認めた.輪状膵は幽門輪をも被い,これを剥離して幽門輪直下に十二指腸潰瘍を見出した.
他の1例は35歳男.十二指腸下行部がその前面の一部を除き膵頭部に取囲まれる不完全な輪状膵であった.幽門輪直下に十二指腸潰瘍を認めた.
何れも幽門側広範囲胃切除を行い,結腸前胃空腸吻合で再建した.
切除標本には2症例ともに十二指腸潰瘍の他に散在多発性胃潰瘍が存在した.
2. 輪状膵の成因,症状,合併疾患診断,治療等につき考察した.とくに成人輪状膵の特質につき臨床的考察を加えた.
3. 消化性潰瘍を合併した輪状膵の手術々式は幽門側広範囲胃切除術が最適であることを確認した.