日本臨床外科医学会雑誌
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膵炎患者にみられた脾動脈瘤の一治験例
前田 和良戸田 慶五郎半羽 健二山本 誠己田中 智之
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1978 年 39 巻 5 号 p. 758-765

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抄録
数年にわたり上腹部の激痛発作を繰り返してきた36歳,男子の膵炎患者に,左上腹部の小児手拳大有痛性腫瘤を触知したため,腹腔動脈撮影を施行した.これにより,脾動脈主枝起始部に径約2cmの球状の動脈瘤が描出され,触診での腫瘤の位置と一致した.開腹すると,膵体部に径約8cm大の球状の仮性嚢胞があり,さらにこれを切開すると内腔に径約3cm大の球状の動脈瘤が認められた.膵尾部はほとんど壊死自潰していた.脾と共に,動脈瘤,嚢胞,膵体尾部を一塊として摘出した.摘出標本では,動脈瘤は嚢胞の内壁後面と連らなり,また動脈瘤壁は約1.5cmの厚さをなし後壁にて脾動脈側壁と径約7mm大の円孔をもつて通じていた.病理組織学的には,動脈瘤は,非特異的な慢性動脈炎を示す脾動脈との移行部より次第に内膜が線維性に肥厚し,弾性板も消失していた.膵は慢性膵炎像を呈し,動脈瘤はこの炎症の波及によるものと思われた.術後経過は良好で膵炎発作は消失した.
著者の集計し得た本邦での脾動脈瘤の症例は自験例を含めて63例で,このうち術前診断されたものは39例であつた.発生原因別にみると,門脈圧亢進症30例,動脈硬化症13例,血管壁の先天性異常7例,動脈の限局性炎症4例,他は不詳であつた.動脈の限局性炎症の原疾患は,梅毒, Behçet症候群が各1例,および自験例を含めた膵炎の2例であつた.なお欧米においても膵炎に合併して脾動脈瘤がみられた報告は, 4例にすぎなかつた.
今後,腹腔動脈撮影で膵炎症例にも脾動脈瘤が多数発見されるものと思われる.
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