抄録
29歳,男性, 5カ月前から腹痛,体重減少,微熱があつた.回盲部に鶏卵大の腫瘤を触れ, X線所見で回腸末端より盲腸にかけて内腔の狭窄像を認めた.術前診断は回盲部腫瘤(Crohn病の疑),手術所見から盲腸腫瘤と回腸終末部の浮腫, Creeping,腸間膜の肥厚と腸間膜リンパ節の腫脹を認め,回腸・盲腸Crohn病と診断した.右半結腸切除術を施行した.切除範囲は近位・遠位側腸管病変部から30cmの距離をおいて切除し,腸間膜リンパ節廓清を盲腸癌根治手術と同等に行なつた.剔出標本では腫瘤に一致する腸管壁の肥厚と敷石状の粘膜隆起,回腸粘膜には腸間膜附着側を縦走する線状潰瘍を認めた.病理組織学的所見では回腸筋層内および腸間膜リンパ節にサルコイド様肉芽腫を証明した.これらの所見はCrohn病の診断基準のうち2, 3, 4の条件を満す回腸・結腸(盲腸) Crohn病であると判断した.手術後2年を経過した現在,再発もなく正常勤務についているが,慎重な経過観察が今後も心要である.