日本臨床外科医学会雑誌
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術後癒着性イレウス-殊に癒着性イレウスの発生機序について-
溝手 博義植田 紘一龍 忠彦酒井 清太郎吉成 元希矢野 博道猪口 哲三
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1979 年 40 巻 1 号 p. 131-138

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抄録

腸管癒着は術後早期に起こり,その癒着は何らの症状をも呈さないで経過するのが大多数であるが,腸管癒着が完成した数カ月ないしは数十年してから術後癒着性イレウスとなるのはいかなる機序によるのであろうか.
今回は私共が過去10年間に経験した術後癒着性イレウス120例の分析からイレウスの型を分類し,術後腸管癒着がどのようにしてイレウスに発展したかを検討した.すなわち,観血的療法がなされた82症例の開腹所見から,直接イレウスに関係のあった癒着の型を分類すると6型に分けられ,単純性と複雑性イレウスとの間にもそれぞれ特徴のあるTypeに分けられた.また,腸管の癒着部位は後腹膜が最も多く,ついで腹壁,腹腔内他臓器となっていた.
上記のような6型と腸管の癒着部位の関係から6型を1型づつ検討したところ,第1型,第II型は主に内ヘルニアの発生機序と同様な機序をとるものと考えられ,第III, IV型は腸管の屈曲,腸管の長軸方向への捻転あるいは腸軸捻症などによって発生すると考えられた.第V, VI型は腸管の直接の癒着自身はイレウスに関与せず,癒着のないところに内ヘルニア状態とか,腸軸捻が起こってイレウスとなると解された.
以上,術後癒着性イレウスの発生機序について,殊に内ヘルニアと同じ発生機序によると思われる点を強張し,イレウスを6型に分類した.

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