日本臨床外科医学会雑誌
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腸間膜に発生した嚢腫状リンパ管腫の1例
佐藤 茂範大内 孝文舟山 仁行田渕 崇文徳毛 公人長田 省一井上 仁湯本 克彦小沢 靖大石 山相馬 哲夫
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1979 年 40 巻 1 号 p. 125-130

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抄録

腸間膜嚢腫は病理学的にそのほとんどがリンパ管腫であることから,最近ではWegnerの分類に従って, (1) 単純性リンパ管腫, (2) 嚢腫状リンパ管腫, (3) 海綿状 リンパ管腫の3種に分けるのが一般的である.
本邦での報告は明治36年,三村によるものが最初であり,以来200例に満たぬ報告例があるのみである.
我々は最近,腸間膜に発生した,嚢腫状リンパ管腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告したい.
患者は5歳の女児で,腹痛,嘔吐を主訴として来院した.既往歴に特記すべきことなく,父方の祖母が子宮癌で死亡の家族歴を得する.患者は入院の8カ月前より,たびたび嘔吐し,近医より目家中毒の診断のもとに加療されていたが,腹痛強度となったため紹介入院となった.
検査所見では特に異常を認めず,腹部単純X線像で左季肋下にニボーを認めた.腹部は軽度に膨満し,さらに軽い圧痛を訴えるが,腫瘤その他は触れなかった.
2日目に開腹,トライツ靱帯より肛側約160cmの小腸間膜に大人超手拳大の黄色,軟な波動を有する腫瘤を認めた.同部の小腸は,腫瘤の頚部を軸として捻転し,口側腸管は著明に腫脹を示していた.腫瘤を含めて約20cmの小腸切除,端々吻合した.腫瘤は約15×9×7cm,多房性で,黄色,粘稠の液約800mlを入れていた.
病理学的に一層の内皮細胞と間歇的に存在する平滑筋を有する壁の大小さまざまに拡張されたリンパ管を認め,嚢腫状リンパ管腫を診断した.

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