日本臨床外科医学会雑誌
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B型Wolff-Parkinson-White症候群の一手術経験-複数の副伝導路が存在する場合の術中の問題点-
宇賀 四郎大賀 興一中村 昭光池田 識道佐々木 義孝玉利 公正和田 行雄坂部 秀文前田 米造内藤 和世嶋田 秀逸中路 進原 智次渡部 高久浜本 肇馬場 道夫
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1979 年 40 巻 1 号 p. 54-59

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抄録

B型WPW症候群を呈する器質的心疾患のない17歳,女性に対し, 1977年5月26日,副伝導路切断術を行った.手術により心電図の完全な正常化は得られなかったが,術後は何ら薬剤を使用しなくても頻拍発作は皆無となり,すでに18カ月を経過した.誘発させ得た発作性上室性頻拍は, 7秒以上持続することはなく,臨床的には満足する結果を得た.
本症例の頻拍発作は乳幼児期にはじまり,年に数回の発作性上室頻拍や心房粗動により,ショック状態に陥るなど,日常活動が著しく制限をうけていた.発作の持続時間は最高8時間に及ぶが,大半は約2時間以内であった.
術前のepicardial mappingでは,最早期興奮部位は右心室外縁にあり,典型的なB型を示した.同部にて右心房と右心室を完全に離断することにより,最早期興奮部位は右心室流出路へと変化した.心電図では, PQ時間は0.08秒より0.10秒に延長し, V1誘導はrS型よりqr型へと変化した.
術前後の結果から,右心室遊離壁以外に副伝導路の残存していることが考えられる.複数の副伝導路が存在する場合の術中の問題点について,検討を加え報告する.

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