日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
家族性発生した甲状腺髄様癌の3例
田中 忠良森重 一郎宮原 義門坂口 勲
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 40 巻 1 号 p. 60-66

詳細
抄録

本邦での発生頻度は低いが,甲状腺髄様癌は臨床病理学的にきわめて特異な病態を示す.とくに,家族性発生の頻度が高いことと他の内分泌腺腫瘍を合併することが特徴的であるが,われわれは甲状腺髄様癌に副腎褐色細胞腫を合併したSipple症候群の1例を経験し,その家系調査によって,姉と父方の叔母に甲状腺髄様癌を発見した.
家系発端者(症例1)は23歳,女子で,左副腎褐色細胞腫の術後, 11カ月目に甲状腺髄様癌で甲状腺全摘術と頚部廓清術を施行した.髄様癌は両側多発性であった.
症例2は28歳,女子で右結節性甲状腺腫で手術を行ない,病理組織学的に甲状腺髄様癌と診断された後に症例1の実姉であることが判明した.しかし,家庭の事情により他院で根治手術を受けたが,血漿カルシトニンは6.0ng/dlと高値を示した.
この姉妹の父方の叔母は昭和31年, 33歳の時某院で甲状腺腫の手術を受けており,病理組織標本のみ入手し得た.当時の組織診断は乳頭状腺腫ということであったが,再検にてアミロイドの沈着を認める髄様癌と診断された.この症例3は甲状腺腫の術後2年目に高血圧で死亡しており,副腎褐色細胞腫の疑が濃厚である.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top