日本臨床外科医学会雑誌
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肝内胆管拡張を伴う巨大な総胆管嚢腫の1例
曹 桂植藤堂 泰三新田 貢頼 明信土肥 浩義梅山 馨青木 豊明
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1979 年 40 巻 4 号 p. 672-678

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抄録
先天性胆道拡張症は欧米では比較的希れな疾患であると言われているが,本邦においては膵胆管合流異常を伴う疾患として多くの報告をみる.われわれは最近肝内胆管拡張を伴った巨大な総胆管嚢腫を経験したので報告する.
症例は14歳,女性で,嘔気,腹部腫瘤,黄疸を主訴として昭和52年2月18日当科に入院した.逆行性膵胆管造影,超音波エコー,胃・十二指腸造影,膵シンチグラム,胆道シンチグラム,選択的腹腔動脈撮影を行い肝内胆管拡張を伴った総胆管嚢腫と診断しえた.しかし入院後も腹部腫瘤は漸時増大し,閉塞性黄疸を呈したため経皮経肝胆管ドレナージ術を行い嚢腫の腫小,減黄を待って手術を行った.手術は総胆管嚢腫摘出後,総肝管・空腸吻合術(Roux-enY)を行った.
嚢腫は液量が5.300mlにも達する巨大なものであった.嚢腫の内容液が5.000ml以上にも及ぶ症例の報告は数少なく欧米で5例,本邦では自験例を含めて7例の12例にすぎなかった.これらのうちでも嚢腫摘出を行い治癒しえたのは自験例のみであるが,これは超音波診断,胆道シンチ,逆行性膵胆管造影等診断技術の著しい発達,そして麻酔を含む小児外科の発達とともに経皮経肝胆管ドレナージ術の発達により術前に嚢腫の縮小,減黄そして全身状態の改善によって安全に手術が行われるようになったためと思われる.さらに巨大嚢腫例,本疾患について文献的に検討し成因,主訴,術前診断,手術々式について考察する.
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© 日本臨床外科学会
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