免疫不全状態を背景にしている担癌宿主の細胞性免疫能の変動を観察することは,治療の選択,予後判定の一指標となると考え,手術施行担癌患者に5FU, FT-207及びMMCの単独或は併用による化学療法, OK-432による免疫療法,さらに両者を併用した免疫化学療法を胃癌症例63例を中心に計98例に独自のプロトコールにのっとり施行し,細胞性免疫能の変動を末梢血T細胞,遅延型皮膚反応で観察した.
I. 実験方法
1) T細胞測定:比重1.077のSodium Metrizoate ficollを用い,比重遠心法にて分離したリンパ球をマイクロテストプレート法にてT細胞とB細胞に織別した.
2) 遅延型皮膚反応: PPD及びPHAを抗原として,患者前腕に皮内接種し,平均紅斑径を測定した.
II. 実験結果及び結語
(1) 化学療法により担癌宿主の細胞性免疫能は低下する.
(2) 多剤化学療法に於いてその傾向は著明であった.
(3) 治癒切除例では,化学療法による細胞性免疫能低下は軽微であった.
(4) 免疫療法により担癌宿主の細胞性免疫能は保持向上する.
(5) 非切除例及び再発例では,細胞性免疫能は保持向上は殆んど期待できない.
(6) 免疫化学療法でも,担癌宿主の細胞性免疫能は保持向上され,化学療法による殺腫瘍効果と免疫療法による免疫賦活効果の相乗効果が期待できる.
(7) いずれの治療法に於いても残存腫瘍の大きい非切除例及び再発例では,その効果はあまり期待できない.
(8) 現状に於いて,担癌宿主の細胞性免疫能を経時的に観察しつつ,化学療法に免疫療法を併用した免疫化学療法が最も有効である.
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