1980 年 41 巻 1 号 p. 117-125
13例のloop ileostomyの経験を述べた.潰瘍性大腸炎4例,大腸腺腫症9例であった. 13例中11例は,全結腸切除,直腸粘膜切除,回腸肛門吻合術に,吻合部空置の目的で行った.残り2例中1例は亜全結腸切除,直腸粘膜切除,上行結腸肛門吻合術に,吻合部空置の目的で行い,他の1例は中毒性結腸拡張症に対し,病変大腸空置の目的で行った.
回腸人工肛門作成手技,閉鎖手技,合併症時の手術について述べ,装具の重要性を指摘した.術後便の性状は4週目で安定し,便量は自然肛門便の約4倍となった.尿量はそれに伴い減少した.術後3, 4日目にBUNの軽度上昇をみたものがあったが1週目以後は見られなかった.術後減少した体重は徐々に回復し,特に成長期にはるものは早いことが示された.回腸瘻ビランは術後2週目が最も強く,患者の不馴れによるものが多く,適切なる管理により治癒した.
人工肛門の陥凹,脱出が各1例に見られた.イレウスが2例に見られたが, loop ileostomyとの直接の関連は見られなかった.本法により重篤な骨盤内感染が防止され,罹患大腸の空置のみでなく,全結腸切除,直腸粘膜切除,回腸肛門吻合術の吻合部空置の目的にloop ileostomyは有効であると結論された.