日本臨床外科医学会雑誌
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乳癌および胃癌患者における免疫能
とくに乳癌患者に対する治療と免疫能
北村 正次冨永 健酒井 忠昭金子 甫林 和雄高橋 勇粟根 康行片柳 照雄伊藤 一二
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1980 年 41 巻 3 号 p. 434-442

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抄録

乳癌患者132例,胃癌患者167例について免疫能の比較検討を行った.
乳癌例において末梢血中リンパ球数をstage別に比較したが有意差はなく, stage IIと再発症例との間には有意差を認めた(p<0.05).胃癌ではstage IIとIVとの間に有意差を認めた(p<0.05).
PPD皮膚反応をstage別に比較したところ,乳癌ではstage I, IIおよび良性乳腺疾患とstage IVとの間に有意差を認めた(p<0.05).胃癌ではstage IとIVとの間に有意差を認めた(p<0.05).
PHA皮膚反応をstage別に比較したところ,乳癌では各stage間には差はなく, stage IIおよびIIIと再発乳癌患者との間に有意差を認めた(p<0.05).胃癌ではstage Iはstage IVに比較すると,反応は有意に強かった(p<0.05).
DNCB皮膚反応をstage別に比較したところ,乳癌ではstage IVで陽性率が著明に低く, stage I, II, IIIおよび乳腺良性疾患との間に有意差を認めた(p<0.05).胃癌ではstageの進行とともに陽性率の低下傾向を示したが有意ではなかった.
乳癌におけるImmunoglobulinをstage別に比較したが有意差を認めなかった.
乳癌における末梢血中T細胞数およびリンパ球幼若化反応(SI)を健常人女性25例と乳癌34例を比較したところ, T細胞数では健常者が乳癌より有意に高く(p<0.01), SIの比較では有意差を認めなかった.
術前および術後のT細胞数の変動をみると,術後2週目にはほとんどの症例が低下傾向を示したが有意な低下ではなく, S. I.では術後において有意な低下を示した(p<0.05).
再発乳癌に対する化学療法および進行癌に対する術後補助化学療法施行時における免疫学的パラメータを検討したところ,免疫能の低下が認められたため,免疫賦活剤の併用が必要と考えられた.

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