日本臨床外科医学会雑誌
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自然気胸の外科治療
奥道 恒夫西亀 正之藤井 俊宏児玉 治黒田 義則児玉 求江崎 治夫
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1980 年 41 巻 3 号 p. 454-459

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抄録

昭和45年1月より昭和54年7月までに教室で経験した自然気胸手術症例は50例であり,両側手術4例を含み,計54回の開胸手術を施行した.男女比は44:6と男性に多く,発生側は右側14例,左側23例,両側13例であった.年齢別頻度では20歳台にピークを認め,平均年齢は28歳であった.術前のX線にて16例(30%)に胸水を認め, 33例(61%)に嚢胞を認めた.
手術適応に関しては,両側気胸(同時,異時) 13例(26%),同側再発22例(44%),肺再膨張不全7例(14%),明らかな嚢胞5例(10%),血胸2例(4%),膿胸1例(2%)であり,初回発作にて手術を施行したのは15例であった.開胸所見では, 54例中49例(91%)に嚢胞を認め, 2コ以上の多発性嚢胞例は34例(63%)であり,嚢胞の存在部位は,肺尖部のみが39例(72%)と最も多く次いで肺尖部+S6の6例(11%)であった.
開胸方法は初期の25例は全て後側方開胸を施行したが,以後は,肺尖部にのみ病変を認める例には腋窩開胸,肺尖部以外にも病変を認める例や嚢胞不明例には後側方開胸を原則として施行した.手術術式は,嚢胞切除兼肺縫縮術48例(89%),肺縫縮術4例(7%),剥皮術兼胸廓成形術1例,肺葉切除1例であった.術後合併症では,初期の後側方開胸例の3例において一過性の肋間神経痛を認めたが,他の重大なる合併症は認めなかった.術後の肺機能では, 30症例中2例にのみ軽度の肺機能障害を認めた. 50症例に対し54回の開胸手術を施行し1例のみに再発を認め,再発率は1.8%であった.
自然気胸の外科的療法は, (1) 入院期間が短期間ですむ, (2) 術後合併症が少ない. (3) 術後肺機能障害が少ない. (4) 再発率が低い等より自然気胸の根治療法として最良の方法である.

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