日本臨床外科医学会雑誌
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癌性腹膜炎による難治性腹水に対する腹水透析の経験
大島 行彦山尾 哲彦榊原 譲大場 正己
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1980 年 41 巻 3 号 p. 501-505

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抄録

われわれは,癌性腹膜炎による難治性腹水の患者12名に対し,旭メディカル製Hollow Fiber (AHF-MA及びAHF-UN)を用い, 20回の腹水濾過濃縮再静注(以下腹水透析と略す)を施行し,良好な成績を得た.腹水透析により腹囲の減少,尿量の増加,腹満感の軽減,経口摂取量の増加などの自他覚症状の改善を認めた. AHF-MAは癌細胞,細菌など細胞成分を完全に除去し,蛋白は全量通過した.これは腹水用濾過膜として優れた特性である.しかし発熱物質は通過した. AHF-UNは蛋白などを濃縮し,水,電解質,アンモニア,尿素窒素,クレアチニンなどを同じ割合で限外濾過した.これは腹水用濃縮膜として優れた特性である.しかしビリルビン, GOT GPTなども濃縮した.われわれは平均約3,000mlの腹水を,約2分の1に濃縮した.これらの治療前後の電解質,アンモニア,ビリルビン, GOT, GPTなどの血清値に有意の差は認められなかった.以上より,これらの組み合わせによる腹水透析は,癌性腹膜炎による難治性腹水の治療法として有用な方法であると考える.しかし発熱物質,ビリルビンなどの濃縮再静注に関しては,今後の問題であろう.

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