日本臨床外科医学会雑誌
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総胆管切開とT-tube drainage
Silicone rubber T-tubeの危険性について
佐々木 政一柿原 美千秋橋本 忠明青木 洋三勝見 正治
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1980 年 41 巻 3 号 p. 495-500

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抄録

総胆管切開後のT-tube drainageは,胆管内減圧,感染胆汁の除去および洗浄,胆管のsplinting,胆石溶解剤の注入,遺残結石の摘出など,その利用価値は高い.一方胆道感染,胆管狭窄,抜去後の胆汁性腹膜炎など,合併症も少なからずみられ,なおいくつかの問題を残している.
我々は最近,周囲の組織反応が弱いとされているsilicone rubber T-tube抜去の際に,瘻孔形成不完全に起因すると思われる胆汁性腹膜炎を3例経験した.
Silicone rubberは従来のlatex rubberと比べ,そのすぐれた無刺激性,無反応性により,癒着障害,胆管壁刺激などのやっかいな合併症は避けられるが,瘻孔形成に時間を要し,短期間で抜去すると,瘻孔形成不完全に起因する胆汁性腹膜炎を惹起する危険性をはらんでいる.
よって,悪性腫瘍の際のintubation,肝内遺残結石の洗浄などの長期間留置を必要とする場合を除いて,術後の一時的な減圧を目的とする短期間のT-tube drainageには,瘻孔形成に時間を要するsilicone rubberは避けるべきで, latex rubberを使用することを勧めたい.

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