日本臨床外科医学会雑誌
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教室における縦隔洞腫瘍の検討
とくに悪性例の術後経過を中心にして
高場 利博舟波 誠川嶋 昭門倉 光隆山田 眞虫明 孝康石井 淳一
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1982 年 43 巻 9 号 p. 1033-1038

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抄録

昭利40年から昭和56年までの17年間に教室で経験した縦隔腫瘍は43例である.胸腺腫が18例(42%)で最も多く,次いで奇形腫,神経性腫瘍の順で,その頻度は本邦の集計報告と一致していた.年齢層は0歳から66歳に及び,男性に多い傾向がみられたが, 20歳代が最も多かった.また悪性例は全体の60%と多いが, 50歳以上例は全例悪性で,悪性胸腺腫がその主因であった.
外科治療について良性例で問題となる点は少ないが,悪性例では問題点が多い,すなわち,悪性例26例中19例に手術が行なわれているが,根治手術の行ないえたものは6例にすぎなかった.補助療法としてはコバルト照射と薬物治療が行なわれ,コバルト照射は17例に施行されているが, 1年以上生存中の6例と術後2年以上を経て死亡した2例では明らかなコバルト照射の効果が認められ,非手術例の中でも明らかな延命効果がみられた.
悪性縦隔腫瘍に対する外科治療は,根治手術が施行できれば一般に長期予後も良好となる例が多いが,今回の検討では根治手術施行例の中にも術後再発例があり,また明らかに非根治手術であった症例でも,術後の積極的な補助治療により長期生存し社会復帰している例もみられた.積極的な外科治療に加えて,術前術後の合併療法が成績向上につながるものと思われる.

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