抄録
いわゆる高位胃潰瘍に対し,選択的近位迷走神経切離術兼分節胃体部切除術(以下,近位迷切兼分節胃切術と略す)を施行した24症例について, 99mTc法による胃内容排出時間,胃分泌動態および食道胃接合部内圧変化などについて検討を試みた.近位迷切兼分節胃切術の術後胃内容排出時間をみると, T1/2値は59.8±6.72分(mean±SE), 60分残存率は52.3±2.43% (mean±SE)であり良好な排出能を示した.胃分泌に対する減酸効果は,高位胃潰瘍単独例の術前成績は大部分が低酸症例であり,術後の減酸効果は基礎分泌量(BAO) 100%,最大刺激分泌量(MAO) 89.8~100%,最高刺激分泌量(PAO)で90~100%であった.高位胃潰瘍兼十二指腸潰瘍共存例では術前高酸例が多かったが,術後の減酸効果はBAO97.8%, MAO79.8%, PAO87.5%であった.さらに本術式の食道胃接合部内圧におよぼす影響を検討する目的で, infusion法を用いて下部食道昇圧帯を測定したが,内圧約20cm H2O前後で幅約2cmにわたる昇圧帯が認められ,食道・噴門部機構もよく維持されていることが示唆された.
以上の成績からも,高位胃潰瘍に対する近位迷切兼分節胃切術は有用な術式と考えられる.