日本臨床外科医学会雑誌
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虫垂および盲腸に限局したCrohn病の手術経験
有吉 秀生根木 逸郎松本 憲夫大石 秀三丹黒 章
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キーワード: 虫垂, Crohn病
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1984 年 45 巻 12 号 p. 1632-1636

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抄録

症例は27歳女性で1年前頃より時々右下腹部痛をきたしていた.注腸透視にて盲腸内腔の虫垂根部附近に凹凸不整な隆起性病変を認めたため悪性腫瘍の診断で入院した.右下腹部に3×5cm程度の卵円形の腫瘤を触知したが,胸写,心電図,血液学的検査等では異常はなかった.盲腸の悪性腫瘍の診断で回盲部切除術を施行した.手術所見では,盲腸内にて虫垂根部に一致して, 2×2cm程度の硬い腫瘤を触知したが漿膜面の変化はなく限局されていた.虫垂は表面の炎症所見軽度で,壁は浮腫状で肥厚しており,内腔に液体の貯留を思わせる波動を認めた.切除標本の肉眼所見では,虫垂根部に乳頭状に隆起した病変を認めた.表面は米粒大から小豆大の大きさのポリープの密集を思わせた.またBauhin弁部にも小豆大のポリープを認めたが,回腸粘膜自体には異常所見はなかった.虫垂は,壁の肥厚著明で,内腔に膿の貯留を認めたが,肥大は著明ではなかった.病理組織学的検索にて虫垂に類上皮細胞とLanghans型巨細胞からなる非乾酪性肉芽腫の存在およびリンパ球の集簇巣を主とする全層性炎症の存在が確認された.また,裂溝の存在,密集性炎症性ポリポージスの存在もあり,典型的なCrohn病と診断された.術後の病理組織学的検索にて虫垂のCrohn病と診断された症例を報告した.本例は3年半を経過した現在,再発をみていない.
虫垂のCrohn病の概念の確立が期待されている現在,大変興味ある症例と思われた.

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