抄録
過去6年間に当科で手術した胃癌症例は401例で,そのうち70歳以上の高齢者は86例(21.4%)であった.高齢者胃癌の臨床病理学的特徴および手術成績と予後を検討するため, 49歳以下の72例および50~69歳の243例を比較対照群とした.
高齢者における入院時の主訴では,心窩部痛が少なく,上腹部のつかえ感,不快感が多かった.腫瘍の占居部位では,胃下部に多く,胃中部に少なかった.肉眼分類では,早期癌の隆起型が多く,平担・陥凹型が少なかった.組織分類では,高・中分化型(pap, tub1, tub2)が多く,低分化型(por, sig)が少なかった.手術々式では,胃全摘17例,胃切除58例,吻合その他11例であり,他群に比し全摘がやや少なかった.組織学的進行程度では, stage I: 29例, II: 12例, III: 21例, IV: 24例であり,他群との頻度の差はなかった.深達度,リンパ節転移の程度にも差がなかった.根治度では,治癒切除68.6%,非治癒切除18.6%であり,他群との差はなかった.術後合併症は19.8%で他群より高率であった.合併症の内容では縫合不全7例,肺合併症2例,膿瘍2例,創〓開3例などであった.手術直接死亡は5例(5.8%)であった.累積5年生存率では, stage I (24例)は100%, stage II (7例)は63%であるが, stage III, IVでは有効例が少なく十分な成績を得られなかった.膵脾合併切除例には1年以上の生存例はなかった.
これらの結果より,手術に際して積極的に治癒手術を施行すべきであるが,拡大根治手術の適応決定には年齢上のriskを十分に考慮する必要があると思われた.また術後縫合不全と肺合併症を予防することが重要と考えられた.