抄録
我々の教室では,以前より原発進行乳癌及び局所再発乳癌症例に対しても,局在根治を得るべく積極的に局所を広範囲に切除し,同時に術前後のadjuvant chemo-endocrine therapyを併用する方針をとっている.しかし,広範囲の皮膚切除創に対して胸壁を母床としたmesh skin graftによる再建にはおのずと限度があり,新たな母床が必要となる.今回,我々は,進行・再発乳癌に対する広範囲皮膚切除6例において,有茎大網移植片を母床としたmesh skin graftを行い良好な成績を得たので報告する.
対象は,原発進行乳癌3例,局所再発乳癌3例であり,全例遠隔転移を伴うM1症例であった.術後の植皮の状態は, 6例中5例は,完全に生着し,他の1例は一部壊死に陥ったが, Thiersch法による皮膚移植を行い寛快した.又, 6例中2例は1年以内に肺・胸膜転移にて死亡したが,残りの4例は,術後9カ月~1年11カ月と生存中であり,一般状態良好にて,外来で経過観察中である.術前後のperformance statusの変化においては, 6例中4例に改善(2→1)を認め, 2例は不変(2→2)であった.
大網は豊富な血流及びリンパ流を有し,虚血組織の側副血行を促し,局所の免疫能を保持するといった特徴を有する.又,組織修復力も旺盛で,組織の浮腫も軽減させる.従って,乳癌症例においては,難治性の胸壁放射線潰瘍,同時両側乳癌,炎症性乳癌,広範な局所再発例,胸壁合併切除例などが,本術成の適応と考える.