日本臨床外科医学会雑誌
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術中局所止血の新しい試み
特にMicrofibrillar Collagen Hemostatの使用
杉山 貢林 秀徳戸塚 貴雅城戸 泰洋渡辺 桂一山中 研土屋 周二諸橋 正仁
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1984 年 45 巻 2 号 p. 193-200

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抄録

われわれは主に開腹手術中の止血しにくい出血33症例に対して,近年米国で新たに局所止血剤として開発された微線維性コラーゲン止血剤(Microfibrillar Collagen Hemostat: 以下MCH)を使用し,以下の結果を得た.
1. 出血部位は肝臓9例,脾臓4例,膵臓7例を含む実質臓器からの出血20例,直腸癌手術時の仙骨前面よりの出血4例,前立腺からの出血2例,その他の7例であった.
2. 止血効果は33例中,「著効」: 11例,「有効」: 20例,「不明」:なし,「無効」: 2例であり,いわゆる有効率は93.9%と良好であった.
「無効」: 2例の内1例は巨大胃潰瘍の血管露出例に胃切開を加えて使用したものであり,他の1例は悪性胸腺腫の腫瘍端からの出血で末梢血液の血小板数が23,000/mm3と減少していた.
3. 手術後の観察では,後出血およびMCH使用による副作用は認められなかった.
4. MCHは出血面に強い付着力があり,また止血後にも剥離しにくく,余剰のMCHは洗浄除去でき,出血面に付着したものは剥れないなどの特徴がある.
今回の結果から総合すると, MCHの使用法の要領を会得すればこれまで止血が難かしいとされた肝臓切除面,脾臓,膵臓からの出血に対して有用であり,今後は臨床的に広く応用する価値があるものと思われる.

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