抄録
診断,治療とも困難であった肝内結石症も超音波検査,超音波映像下穿刺により診断も容易となり,これを応用した超音波ガイド経皮経肝胆道鏡下截石法により治療成績も進歩しているが,肝内胆管癌の発生は,肝内結石症における合併症として重要な問題として残っている.われわれは病悩期間12年の肝内結石症に合併した28歳男性の肝内胆管癌症例を経験したので,その臨床経過とともに本邦報告例について集計した.またこのような肝内結石症に合併した肝内胆管癌は,繰り返しておこる慢性肝内胆管炎と胆汁うっ滞を原因として発生すると考えられるため,肝内結石症においては截石後も超音波検査はもちろん,選択的動脈造影,胆汁細胞診あるいは胆道鏡による肝内胆管の生検なども併せて行い,注意深く経過観察を続ける必要があることを強調した.